河西数真(かにかま)です。
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このメールでは、
哲学対話をする時に意識しておくべきこと、
対立や心の葛藤を解消するコツ
についてお伝えします。



1.人は欲望を根拠にして確信をもつことを忘れない



人が何か意見を持つ時、
その意見が(その人にとって)正しいかどうかは
経験を根拠にして考えます。



例えば、
宗教を信じることが正しい
と考える人もいれば、
宗教は信じないほうが正しい
と考える人もいますよね。



宗教を信じて救われたように感じたり、
教義を学んで正しいと思えたり、
他の信徒がいい人で
いろいろ助けてもらえたり、

宗教に関して心地よい経験を
より多くしている人にとっては、
宗教を信じることが正しいでしょう。



一方、その逆に
宗教を信じてみたけど救われなかったり、
怪しい宗教の話をよく聞いていたり、
友人や家族が宗教にはまり込んで
人が変わってしまって付き合えなくなったり、

嫌な経験の方が多い人にとっては、
宗教は信じないほうが正しいのです。



統計データなどから、
正しそうかどうか、
客観的に判断できるんじゃないか?

と考える人もいるかもしれません。



それも、経験によるものです。



データを信じる人にしてみれば、
データが正しい判断基準なのでしょうけど、

データがどうであれ、

宗教を信じることが正しい
と考える人もいれば、
宗教は信じないほうが正しい
と考える人もいるのです。



当然、根拠としている経験は
人によって違います。



自分の経験が
一般的であるとは限りません。



さらに言えば、
同じ経験をして、
同じ確信を持つとも限りません。



じゃあ何が確信の根拠なのか?
と問えば、
最近の哲学では
”欲望”
だという答えが出ています。



つまり……

宗教を信じることが正しい
という人は
”信じたい”とか
”信じてほしい”
と思っていて、

宗教は信じないことが正しい
という人は
”信じたくない”とか
”宗教やめてほしい”
と思っていて、

データが正しい
という人は、
”データで判断したい”
と思っているのです。



信じることによってどうなりたいか、
というような、
それらの欲望の先に
別の欲望があったりもしますが、

人は様々な欲望を持ちます。



それを一般的、絶対的であるとして、
信じたほうがいい、信じないほうがいい
というレベルの話をしていれば、
喧嘩にしかなりません。



何か自分の意見を持ち、
それを人に伝える時、

これは自分の
どんな欲望を根拠にした意見だろう?

相手が根拠にしている欲望が自分と違えば、

自分が正しいと思っていることも、
相手にとってはそうじゃないかもしれない。

と、考えることを忘れないようにしましょう。



正しいと思っていることを伝えない
ということではありません。



伝える時に、
相手にとっての正しいもの
があるかもしれない
と配慮するということです。




2.第三のアイデアをお互いに探る


それはあなたの経験を
根拠にしているのだから
経験が違う人にとっては、
絶対に正しいとは言えないのでは?



というように相手を否定することは
簡単にできてしまいます。



対話をする目的を
相手に言い勝つこと
としていたら、
建設的な議論にはなりません。



先程の例でいえば、
信じるほうが正しいか、
信じないほうが正しいか、
という議論、問いかけは
答えの出ない偽問題だと言えます。



答えの出ない問題についての議論は
虚しいものになるでしょう。



それを回避するためには、
あちらか、こちらか、ではなく
あちらも、こちらも、となる
第三のアイデア
をお互いに探す努力をしましょう。



これが私の確信。
では、あなたはどうですか?

苫野一徳『はじめての哲学的思考』


という態度で
お互いの欲望を共有するのも良いでしょう。




3.お互いに人であること


あちらも、こちらも、となる
第三のアイデアを探すには
お互いの欲望を理解し、
承認することが前提になります。



しかし、
相手の欲望を理解しようともせず、
一方的に自分の欲望を通す関係があります。



例えば、
魚を食べたい時、
魚の欲望を考慮することがあるでしょうか。



生き物には、
生きたい
という欲望が根本にあるのですが、
魚の欲望はないものとして考えたり、
そんなことは考えずに食べたりしませんか?



同じように、
相手から一方的に
意見を押し付けられる、
欲望を押し付けられる状況は、

人として見られていない、
相手にとって自分は魚

ということです。



まずは、
私は人なんです、魚じゃないんです
ということを伝えないといけません。



相手が気付いていないだけかもしれないのですから。



相手を尊重しながら
自己主張するコツとして、
アサーティブ・コミュニケーション
というものがあります。



こちらを参考にしてみてください。
https://achievement-hrs.co.jp/ritori/?p=2056



あなたの考えは理解したけど、
私はこう思うのです。根拠は……

という具合に話してみて、
それでも相手の態度が変わらなければ、
相手は人ではありません。



他人を人としてみない人は、
人を魚扱いしているので魚です。

魚扱いしている本人が魚です。



バカという方がバカ
という言葉もありますので……



残念ながら、
人は魚とは対話できず、
分かり合うことはできません。



そっと距離をとって、

将来、魚と分かり合えるような
機械が発明されるか、
相手がはやく人間に進化できるように
ひっそりと祈りましょう。



対立を解消できるというのは、
お互いが人であることの
証明にもなるのです。



哲学的対話をする時には、
以上の3つ、

・人は欲望を根拠にして確信をもつことを忘れない
・第三のアイデアをお互いに探る
・お互いに人であること

これらを確認しあってから
始めるのが良いでしょう。




4.自分の中での対立=葛藤


ここまで、
人との対立の解消について
お伝えしてきました。



対立というのは、
自分の心の中にもあります。



あれがしたい、けど……



というような、
心の中の対立を葛藤といいます。



この時に、
するか、しないか、
片方の気持ちを犠牲にして
納得できないまま決める人は、
半魚人です。



半魚人が人間になるためには、
したい気持ちと、したくない気持ち、
どちらも満たすような
第三のアイデアを探りましょう。



その手法を説明します。



まず、する、しない
という2つのコラムを書きます。



私が最近やったのは、
「仕事をする」 「休む」
というものです。



仕事をしたい気持ちと、
休みたい気持ちがありました。



そして、
そんなの仕事の状況とか、
仕事以外にやりたいことがあるとか、
体調とかによって、
どちらを選ぶか変わるじゃんか
と思っていました。



心の中の対立を考える時、
このような

状況によって変わるのが当然だろう

と思っているものを選ぶと
うまくいくように思いますね。



次に、
することによって得られるもの、
しないことによって得られるものを、
リストアップしていきます。



私の例だと、

仕事をすると……

お金が得られる
仕事に没頭していれば気が楽になる
協力して何かを作り上げることができる
生活リズムが整う



休むと……

仕事が薄い時に出社してサボったり
ただ時間を過ごしたりしなくていい
夜ふかししても大丈夫
体が楽
趣味に没頭できる



この時気をつけるのは、
一般的にこうだというものではなく、
自分にとってはどういうことなのか
を意識しておくことです。



次に、
これらの中から
何が一番大切なのか、
何を求めているのか、

あるいは
共通点はあるのか
を考えていきます。



私の例ではこんな答えとなりました。



仕事をすることで、
  協力して何かを作り上げて充実感を得たい

休むことで、
  仕事が薄い時にただ出社するだけのストレスを受けたくない



最後に、
両方の要望を叶えるような
妙案はないのかを考えます。



私の例ではこうなりました。
    
  余計なストレスを減らしていつでも充実感を得られるようにしたい



この答えに、
深く納得できていなければ
やり直しです(笑)



具体的にどうすればいいかが思いつけば、
うまくできていると判断できます。



私の場合では、

小さなことでも充実感を感じられるように、
大げさに喜ぶトレーニングをしていく

という行動を思いつきました。



仕事をするか、休むか
という2つを考えていましたが、
余計なストレスを減らして
小さなことでも充実感を得られるようになれば、

仕事をするのも休むのも、
どっちでもいいじゃないか

と納得できる。



以上の方法は、
TOCクラウドとか呼ばれる手法です。

もっと詳しく知りたければ、
検索してみてください。



検索してもいまいち……
という場合は、
一緒に取り組む機会を作りたいと思います。



このメールに返信をいただければ、
日程調整とかどうやってやるかなど
返信いたします。



他にわからないことやご意見などあれば、
お気軽に聞いてください。



ではまた、
自分自身を王様のように
「おもてなし」していきましょう。



河西数真