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「でもどうやってその魔剣を手に入れるんだ?」
あたしたちはレオナルドが打った葬儀用の剣を入手する計画を話し合っていた。
「こっそり盗み出すしかないでしょうねぇ」
「!?」
レオナルドに頼んだって、無理に決まっている。葬儀用の剣には特別な思い入れがあるみたいだから。
「ねえねえ。それよりあなたの名前は? あたしはクリス。18歳よ」
「え、名前?」
「これから悪事を一緒に働く仲間なんだから、名前くらい知っておいたほうがいいでしょ」
「悪事って……。い、いいのかなぁ? 僕はヤスハル。19歳」
「よろしくねーヤスハル」
「よ、よろしく」
「じゃあどこから剣を盗むかなんだけど。まず、リンゲルマンさんの家には打ちたての剣があるんだけど、NGね。昨日葬儀をやったばかりだから。人もいるかもしれないし、怖い人がくるかもしれない」
「怖い人?」
「金髪オールバックの怖い人よ。剣に対する思い入れが強くて、見つかったら殺されるかも。だから、ちょっと前に葬儀をやった家に忍び込みましょう。それで、あなたの両手剣とすり替えておけばばっちりよ」
「それ、バレたらやばいんじゃないのか?」
「大丈夫だってー。あたしを信じなさいっ」
何も根拠はないけど。
「本当に大丈夫かなぁ」
肝っ玉の小さい男!
「不安? 大丈夫? もっかいおっぱいもむ?」
モミモミ。
あたしも大概だな。こんなことまでする必要ないのに。もっと気を大きく持たないとな。
「さて、落ち着いたら計画実行といきましょう」
モミモミ。
大通りの角を曲がった先にある2階建ての家。ここは、一ヶ月くらい前にレオナルドが葬儀を執り行った場所だ。葬儀では死者の魂が宿るための剣を打つ。今回の作戦目標は、その特別な剣を盗むことだ。
「いい? あたしが曲がり角で誰も来ないか見張りをしているから、二階の開いてる窓からあなたが忍び込んで剣をすり替えてくるのよ」
「分かった。任せてくれ」
こいつ、おっぱいもんだら急に強気になったな。なかなか役に立つじゃないあたしのおっぱい。
作戦はシンプル。失敗する要素はそれほどないはず。窓も開いててラッキー。神はあたしたちの味方ね。
あ。誰か来た時の合図とか、どう対応するかとか決めてなかったわ。
ま、いっかー。
すでにヤスハルは2階の窓際に上っていた。
「クリス、こんなところでまたサボりか?」
びくぅ!
「え、レオナルド?」
「以前打った剣のな、柄を届けに来た」
もしかしてヤバいんじゃない?
「そうなんだー」
「で、この奥の家に行きたいんだが?」
「あ! 今はやめといた方がいいかもよ」
「なんでだ?」
それは、あたしの仲間が今すり替えているから。
「ねんがんの、強力な魔剣を手に入れたぞ!」
→殺してでも うばいとる
ってか、タイミング悪すぎね? ヤスハル来ちゃったよ。
「なんだあいつ? 葬儀で打った剣によく似た剣を持っているが?」
そのまま見間違えてくれることを期待。
「死者の魂を宿らせる魔剣。これで僕も戦える!」
あーあ。あたしは目を合わせない。絶対に。関係ない人だから。
「あぁん?」
レオナルドの眉が毛虫のように中央へ寄る。下唇を前に突き出してとがらせている。
「え?」
状況を分かっていない哀れな子羊が迷っている。
「お前、その剣盗んできたのか?」
「いあ、これは」
あたしの方を見るな。
「自分が何してるか、分かってんのか? あ!?」
青くなった顔の子羊さん。その胸倉をレオナルドが掴んでいる。
「この剣はな、花屋の店先に並んだ花を眺めていたおじいさんに恋をしたおばあさんの元カレの魂を宿すために打った剣だぞ」
分かりづらいな!
「金髪オールバックの、怖い人……」
いまさら思い出したらしい。
あたしはそっと後ずさりして、その場を離れようとした。
「いや、元カレはリーゼントだったらしいぞ。それより、死者の魂の宿った剣を盗むなんてふてぇ野郎だ! ぶっ飛ばしてやる」
「ひぇええええ。ごめんなさーーい! 僕、そそのかされたんです!」
「誰にだ?」
ふと、レオナルドが胸ぐらをつかんでいた手を放す。
「そこの! クリスって女にですぅ!」
逃げようとしていたあたしの背中に指差しが刺さる。
痛いからやめてくれないかな。
「本当か? クリス」
今度はレオナルドの細めた目が刺さってきた。
痛いからやめてくれないかな。
タイトル案
・ヤスハルくんの大冒険
・ハシゴ使用時は倒れないように固定しようヨシ
・おっぱいモミモミ大安売り!
・金髪リーゼントの元カレの魂が盗まれた
・クリス、大ピンチ!
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