お元気ですか、私はジャックの心臓です。
1分間に60回くらい、1日だと9万回くらい、脈拍を打っています。
私には年休はありません。ジャックが起きている時も寝ている時も動き続けています。
私の居場所はジャックの胸の中心です。ジャックの握り拳と同じくらいの大きさを持っています。
時々、居場所が狭く感じられて、肋骨さんを押して広げています。
私の右側は全身から返ってきた血液を肺に送り、左側は肺から返った血液を全身に送ります。
私が動くのをやめると、ジャックは死んでしまうんです。ジャックが死んじゃうと、私も生きていけません。
だから、動くのをやめたり、忘れたりしないようにしています。
だけど私は筋肉のかたまり。脳さんみたいに覚えておくことができないんです。
知ってました? 筋肉にはジャックの意思で動かせる筋肉と動かせない筋肉があるんですよ。
私は、動かせない不随意筋。動くのを忘れたからって、ジャックが教えてくれるわけじゃないんです。
責任重大ですよね。
そこで私はアシスタントを雇っています。洞房結節さんと、房室結節さんです。
洞房結節さんは、私の動くペースを決めてくれます。私が動くのを忘れたり、遅れそうになると「働け!!」ってムチで叩いて起こしてくれるんです。自律神経さんともよく話をしていて、私のペースを決めてます。いつも同じペースで動けばいいわけじゃないんですよね。
例えばジャックが走ったりすると、自律神経さんは「ペースをあげろ」って指令を出してきます。血液中の二酸化炭素濃度を検知して判断してるみたいですよ。
房室結節さんは、洞房結節さんがムチを打つのに合わせて、私の心室に電気を走らせます。また、洞房結節さんほど厳しくないんですけど、洞房結節さんがムチを打てない時は、代理でムチを打ってくれるんです。
私って、急かされたり、ムチで打たれてばかりで大変そうでしょう?
だけどジャックに感謝してもらえることはあんまりないんです。
私にできることは、ジャックが1回寝て起きる毎に9万回くらい寝て起きるだけ。私はジャックという機械の歯車です。
たまにはゆっくり休みたいですよね。
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