お元気ですか、かにかまです。
かにかまって何?⇒プロフィールはこちら。
この小説は、単なるトライアスロン小説ではありません。
困難な現実に向き合う高校生たちの成長物語であり、愛と慈悲の物語です。ヤングアダルト小説ですが、大人の私が読んでも楽しめました。
あらすじを紹介します。
ボーリガード・ブルースター17歳。州で有名なトライアスロンレースに出場するため、日々過酷なトレーニングを続けている。しかし、ある日ボーリガードを「腰ぬけ」呼ばわりした教師のレドモンドに反抗し、停学寸前になってしまう。罰として入れられた短気矯正クラスは、荒っぽい問題児が集まる特別学級。はたして、高校生活最後のレースの行方は……!?
主人公たちは短気矯正クラス=アンガーマネジメントクラスにて、自分の悩み・心と向き合っていきます。
- 問題は何なのか
- なぜ感情を制御できず、短期的行動をしてしまうのか
- 怒りの正体とは
- 真実の愛とは
この辺り、心理学や自己啓発的な内容です。教師であり、セラピストだった著者だから書けるのかもしれません。
さらに、登場人物たちの関係性に、歪んだ愛と憎しみが描かれます。
- 親と子
- 先生と生徒
- コーチと選手
- 「短気矯正クラス」の仲間
どうして、人は分かり合うことができないのか、考えさせられます。
特に、親と子の関係は重大です。
部活にのめり込めば、「お前には才能がないからやめておけ」
音楽を始めても、「やっても無駄だ」
ゴルフをしても、「時間の無駄だぞ」
ブログを始めても「時間の無駄なんだから、のめり込み過ぎるなよ」
息子が何かに熱中するといつも反対する父親というのは、多くの家庭で見られるものなのかもしれません。
いつも枕詞は、「お前のために」
『魂の殺人―親は子どもに何をしたか』の著者、アリス・ミラーによると、「お前のために」という言葉はたいてい、相手のためにならないことをするときに使われます。
「自分も苦労したんだから、お前も苦労しろ」
そんな、無意識の気持ちが歪んだ愛となって表れるのです。
歪んだ愛を受けて育った子は、自分の子にも歪んだ愛を示しやすいといいます。
それを防ぐには、全てを肯定して受け入れること。それが、慈悲です。
なかなかできることではありません。
なぜタイトルが『アイアンマン』なのか。
トライアスロンは、距離が長くなるほど内面の勝負になってくるといいます。
筋肉疲労の問題から、水と栄養を素早く吸収して体を動かすエネルギーに変える内臓の勝負へ。競技時間が10時間を超えるようになると、食事・排泄と生活が競技の一部になっていきます。
最後には精神面の勝負になり、自分に打ち勝った者だけが「アイアンマン」の称号を手に入れる……
全てを肯定して受け入れる心の強さと、アイアンマンの精神面の強さをかけているのだと思いました。
主人公の、「一日も早く、本物のアイアンマンになりたい」というセリフの意味が、より深く感じられます。
作品中で紹介される本。
お読みいただき、ありがとうございました。
こちらの記事もどうぞ。
コメント