スーザン・フォワード『毒になる親』どれだけ親が思考・感情・行動に影響を与えるか

お元気ですか、かにかまです。
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毒親という言葉を知っているでしょうか。

子どもにとって毒となるような、悪影響を与える親のことです。例えば幼い頃しつけのために親から叩かれて恐怖を感じていた影響が、大人になって抑圧された怒りとなり、奥さんにその怒りをぶつける、といった形で表れます。

そんな毒親についての代表的な本『毒になる親』を読みました。

なぜ、親が毒になるのか。それは、子どもの思考・感情・行動が親の影響を大きく受けるからです。

例えば、幼いころ悪影響を受けて育った結果、残虐な行為をするようになったという人物を精神科医アリス・ミラーが紹介しています。

アリス・ミラー『魂の殺人 親は子どもに何をしたか』しつけ・教育の闇を語る本

『毒になる親』では、自分がどれだけ親の影響を受けているか、親離れできていないかというチェックリストが紹介されています。やってみましょう。

 

親との関係における私の「考え方」チェックリスト

チェックリストを自分と友人でやってみた時の比較をしているサイトがありました。

「毒親に育てられた人の考え方の特徴」チェックリストを自分と友人でやってみたらとんでもない結果になってしまった(外部リンク)

16個のチェックリストなのですが、13個当てはまった人と1個しか当てはまらなかった人という違いが出ています。

心理的に親離れできていないという判定基準は4個当てはまるかどうか、です。いくつあてはまるか、やってみてください。私は8個でした。

1.親は私の行動しだいで幸せに感じたり感じなかったりする。
2.親は私の行動しだいで自分を誇らしく感じたり感じなかったりする。
3.親にとって私は人生の全てだ。
4.親は私なしには生きられないと思う。
5.私は親なしには生きられないと思う。
6.もし私が本当のこと(例えば、離婚する、充実した、同性愛である、フィアンセが外国人である、等々)を打ち明けたら、親はショックで(または怒りのあまり)倒れてしまうだろう。
7.もし親にたてついたら、私はもう永久に縁切りだと言われるだろう。
8.彼らがどれほど私を傷つけたかを話したら、私はきっと縁を切られてしまうだろう。
9.私は親の気持ちを傷つきそうな事は何一つ言ったりしたりするべきではない。
10.親の気持ちは自分の気持ちよりも重要だ。
11.親と話をすることなど意味がない。そんなことをしたところで、ろくな事は無いからだ。
12.親が変わってさえくれれば、私の気分は晴れる。
13.私は自分が悪い息子(娘)であることについて親に埋め合わせをしなくてはならない。
14.もし彼らがどれほど私を傷つけたか分からせることができたら、彼らも態度を変えるに違いない。
15.彼らがたとえどんなことをしたにしても、親なんだから敬意を払わなくてはならない。
16.私は親にコントロールなどされていない。私はいつも親とは闘っている。

ースーザン・フォワード著『毒になる親』10章より

いかがでしょうか。以上の項目は、スーザン・フォワードによれば「全て自分をダメにする考え方」です。「親を大切にしなければいけない」というような価値観からの考えだったり、長年生きてきて刷り込まれた考え方だったりするので急に変えることは難しいでしょう。

ですが、自分がどのような考え方をしているかを認識することは、思考のコントロールを取り戻すために有効です。まず、何事も知らなければ対応できないからです。

 

「考え方」と「感情・行動」の関係

『毒になる親』では、感情のチェックリストも4つの感情に分けてまとめてあります。4つの感情とは、以下です。

  • 罪悪感
  • 恐れ
  • 悲しみ
  • 怒り

チェックリストは31項目あるのですが、これらの感情を感じるのは、「考え方」のチェックリストで当てはまった考え方・価値観をもっているからです。例えば、「親は私の行動しだいで幸せに感じたり感じなかったりする」と考えているから、自分がやりたいことをやることで親を不幸にするんじゃないかという「罪悪感」を感じる、といった形です。

そして「考え方」「感情」は、例えば次のような「行動」の原因となります。

  • 親から指摘されると「反射的で自動的に」、反対する。
  • 親に自分の考えを理解させようと一生懸命努力している。
  • 自分が正しいことを示すためにいつも親と口論する。

「反射的で自動的に」行動してしまうのは、思考・感情・行動を相手にコントロールされているということです。

 

親からのコントロールを抜け出すには

では、心理的にコントロールされることから抜け出すにはどうしたらよいのでしょう。

そのステップは、『毒になる親』によると、大まかに以下の3つです。

  • 「怒り」「深い悲しみ」の感情を認める
  • 選択肢をもっていることを自覚するトレーニング
  • 親との対決

順に説明します。

 

「怒り」「深い悲しみ」の感情を認める

本書によれば、親との問題に向き合い、影響から逃れるには、「大きな心の痛みと苦しみ」が伴います。

「究極の父性映画」といわれる『ファイト・クラブ』でも、本当の自分を見つけるために、痛みから逃げずに向き合うんだというシーンがありました。

『ファイト・クラブ』についてはこちらをお読みください。

お前は一体何がしたい? 映画『ファイト・クラブ』

ネガティブな感情と向き合う時に大切なのは、感情を発散させられる環境です。サンドバックに怒りをぶつけたり、趣味で気晴らしをしたり。

行き場を失った感情は、自分や他人を傷つけることがあるからですね。

 

選択肢をもっていることを自覚するトレーニング

これは言い換えると、「反応」ではなく「対応」できるようになるトレーニングです。

「反応」でよくあるのが、否定的な意見を言われた時などに、つい「自分を防衛するために」相手に対して攻撃的になってしまうことです。こうなると、争いがエスカレートして話し合いができません。

「対応」の例として、以下のような返答があります。

  • 「ああ、そうなの」
  • 「なるほど」
  • 「あなたがどういう意見を持とうと、もちろんあなたの自由ですよ」

そのまま使うとなんとなく棘がありそうなのですね。要するに、反射的に反論しないということです。

本書で紹介されている方法は、

  • まずはひとりでイメージして「対応」できるようにする。
  • 次に、誰かと意見が合わなくなった時に「対応」してみる。
  • 最終的に、親との会話で実行する。

すぐには、難しいことだと思います。ですが、感情的に話をしても、何も解決になりません。じっくり取り組んで身に付ける必要がありそうです。

 

親との対決

スーザン・フォワードのいう「親との対決」とは、子ども時代に起きた出来事や自分の気持ちを感情的にならずに親に語る、ということです。

これは、決して親に変わってもらうためとか、自分の不満をぶつけるためとか、理解してもらうためではありません。話をしても、親が変わることはほとんどないからです。

大切なのは、心の奥底にある「恐れ」と向き合うことだといいます。その時に必要なことは、以下引用です。

1.その結果予想される親の「拒絶」、「事実の否定」、「怒り」、その他のネガティブな反応によってもたらされるであろう不快な結末に、対処できるだけの強さが自分にあると感じられる。

2.ひとりだけで孤立しておらず、理解してくれる友人やカウンセラーなど多くの人たちから十分な励ましがある。

3.「手紙書き」と「ロール・プレイ」による練習も十分してあり、「自己防衛的にならない話し方」も十分練習してある。

4.子ども時代の自分の身に起きた不幸な出来事について、自分には責任がないことがはっきりと確信できている。

ースーザン・フォワード著『毒になる親』13章より

親子が仲良くできないのは悲しいこと、とまだ思ってしまいますが、カウンセラーを含めて何人かに話をきいたところ、それは別に普通のことのようです。そして、メンタル的に成長することで親との関係が良くなったという体験談も聞きます。

「親との対決」というのは、出来事を肯定し、自分の感情と向き合う「挑戦」なのでしょうね。

 

おわりに、本書の紹介文を引用しておきます。

『毒になる親』紹介文より

子どもは一生苦しむ。
「毒になる親」に傷つけられた子どもの心は、歳を重ねても癒やされることはない。
不安、怒り、過剰な義務感、つきまとう罪悪感……。
子ども時代に植え付けられた「感情の種」が、大人になったあなたに害を与え続ける。
親に奪われた人生を取り戻すために、あなたがそういう親にならないために。

勇気を持って、本書を開こう。

「自分の問題を他人のせいにしてはならない」というのはもちろん正しい。
しかし自分を守るすべを知らない子どもだった時に大人からされたことに対して、
あなたには責任はない。自分に自信がもてず、さまざまな問題や悩みに苦しむ数千人の人々を、
著者は二十年以上にわたってカウンセリングしてきた。
その豊富な事例から、悩める人生の大きな要因は親であると分析。
傷つけられた心を癒し、新しい人生を歩き出すための具体的な方法を、あなたに伝授する。
カウンセリングの場から発想された”現実の希望”にみちた一冊!

 

お読みいただき、ありがとうございました。

こちらの記事もどうぞ。

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