リスクという考え方を学べる本ー『食のリスク学ー氾濫する「安全・安心」をよみとく視点』

お元気ですか、かにかまです。
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安全な食とは何でしょうか。「この本を読まずに食の安全を語る人は信用できない」と言われるような本を紹介します。

なかなかボリュームのある本で、読み終えるまでの平均的な時間は3時間48分です。

『食のリスク学ー氾濫する「安全・安心」をよみとく視点』はこんな本

「安全・安心」私たちが好きな言葉です。誰しも安全に、安心して暮らしたいと思っているのではないでしょうか。

しかし、具体的に何が安全なのか、どうなれば安心できるのか、と突き詰めて考えた時、答えが出せますか?

世間では、「○○ダイエット」や「○○を食べてはいけない」など、特定の食品のメリットや危険性を指摘する情報があふれています。

正直、この本を読んだからといって「何を食べればよいのか」に対する答えが見つかるわけではありません。

著者の中西準子さんは、環境工学、環境リスク評価を専攻していた工学博士で、安全度を数値化して評価する、ということに取り組んできました。

この本の特徴は、食の安全を、食のリスクという観点から見ることです。

 

安全は簡単に犠牲にされる

この本は以下の4章で構成されています。

  • 第1章:東大大学院でのスピーチ内容。リスクはトレードオフだという問題。
  • 第2章:食糧化学の専門家のインタビュー記事。食べ物が健康や病気に与える影響を課題に評価することの問題。
  • 第3章:食の安全問題についての論争点。毒入りギョーザ事件、有機農業、食品安全委員会についてなど。
  • 第4章:著者のブログから食の安全に関する記事の一部を抜粋。

この本で私が最も印象を受けたのは、第1章です。

安全は大切なものだと思いながら、私たちはしばしば安全を犠牲にしています。

たとえば、これはやすやすとといえるかどうかは分かりませんが、親が子どものためを考えて自分の安全を犠牲にすることはしばしばあります。

急いでいるときに、この道はちょっと危険だなと思っても近道をわざと選ぶこともしばしばあります。

パックにしたほうれん草のおひたしより、自分で作ったほうが安全だと、多くの人は思っているのではないでしょうか。それでも、私たちはスーパーに行ってパック詰めのほうれん草のおひたしを買ってきて、食べています。時間を節約するためにそうするのです。

私たちには、時に安全よりも大切なことがあります。それは食の安全についても同じです。

命に関わる問題だから、食の安全は別物だと考える人もいるかもしれません。そうではないですよ、というのが本書の主題です。

では、どういう安全を優先して、どういう安全なら優先しなくて良いのか。それを知るためには、リスク評価・リスク管理という視点を持つ必要があります。

リスクについては別途記事を書きたいと思っています。

 

まとめ:安全管理という仕事をして思うこと

安全管理者という立場には、つらいものがあります。

何も起こらなくて当たり前、何か問題があると総叩きされる、ということです。かといって、リスク低減のための提案は時にうるさがられます。

リスクという考え方が広まり、認められることを願っています。

『食のリスク学ー氾濫する「安全・安心」をよみとく視点』は、食の安全を題材にして、リスクという「考え方」を学べる本です。

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