お元気ですか、かにかまです。
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最近、親との関係について悩むことがあります。
「結婚しなきゃいけない」
「長男は家を継がなきゃいけない」
まるで親に人生を
決められているような気がして、
嫌気がさしてきました。
同じことを、友人や会社の同僚に言われても
そこまで気にしないと思うんです。
親と他人はどう違うのか?
そんなことを思いながら
一冊の本を手に取りました。
30数年前の本ですが、紹介します。
この本の主張
この本は、
子供のころに行われた
「教育・しつけ」の悪影響が、
犯罪や自傷行為、薬物依存に繋がっている
ということを主張しています。
ここでいう
「教育・しつけ」とは、
子どもに正しい生き方を教える
という名目で行われる、
- 折檻したり
- 納屋に閉じ込めたり
- 言葉の暴力をふるう
ことによって
「子供の心を傷つける行為」を指しています。
心を傷つけられた子どもは、
事実を合理化して、
「良い家庭だ」
と思い込むようになります。
合理化して自分の感情を隠し、
耐えて生きる以外に
選択肢を持たないからです。
子どもにとって、
「親が自分に何をしたか」を
正しく認めることは困難なのです。
そして、
無意識に抑圧された親への憎しみを、
本来の対象とは異なる
他人や自分に投影します。
自分の両親は良い人間だった、
と思いながらです。
結果として、
他人や自分の中に投影した親への憎しみを、
いじめをしたり、自傷行為をしたりすることで
発散するようになります。
著者のアリス・ミラーは、
心理学者として、精神分析家としての
20年の経験から、
以上のことを主張しています。
3人の不幸な子ども
本書では、
3人の不幸な子どもとして、
以下の3人の話が掲載されています。
- クリスティアーネ・F
- アドルフ・ヒトラー
- ユルゲン・バルチュ
それぞれ概要を説明します。
クリスティアーネ・F
麻薬と売春に溺れた日々を過ごした
クリスティアーネは、
子供時代、
父親から理不尽な暴力を受けていました。
クリスティアーネが言うには、
父親の仕事が上手くいかない腹いせに、
部屋が散らかっている等
ささいなことで殴られたようです。
アリス・ミラーによると、
理解できない父親の暴力を
子どもが理由付けした、
ということになります。
クリスティアーネは、
父親が自分にしたようなことを
妹に対して行ったり、
教師や警官に対して反抗したり、
といった形で
抑圧された憎しみを表していました。
最終的に、
クリスティアーネの抑圧された憎しみは
自分への自傷行為となります。
アドルフ・ヒトラー
歴史でも習うアドルフ・ヒトラーは、
ナチスドイツの独裁者であり、
ユダヤ人などの大虐殺につながる
「ホロコースト」を主導した人物です。
アドルフの父、アロイスは、
家庭では独裁的な父親だったようです。
その出自には謎なところがあり、
未婚の娘
マリア・アンナ・シックルグルーバーの息子
として生まれ、
5年後マリアの再婚した夫の弟
ヨーハン・ネポムク・ヒュットラーに
預けられたと言われています。
本当の父親が誰か分からず、
5歳で生まれの母と別れたわけです。
複雑ですね。
母、クララ・ポェッツルの苦労もなかなかです。
16歳の時彼女の言う
「アロイスおじさま」
の家に住み込み、
アロイスの病妻および2人の子どもの
面倒をみることになります。
その家で彼女は、
まだ奥さんが生きているうちに、
その家の主人(アロイス)によって
身ごもらされ、その後、
24歳で48歳のアロイスの妻となり、
2年半の間に3人の子どもを産み、
その3人の子すべてを
4,5週間のうちに
亡くしてしまったのです。
4,5週間の間に
出産を1回と3人の子どもの死
というショックを受け、
夫は支配的で怒りっぽく、
自分はまだ青年期、
という状態では
精神を病んでもおかしくないでしょう。
そんな状態でアドルフを身ごもり、
翌年には出産します。
「また、子どもを失ったらどうしよう……」
アリス・ミラーによると、
そのような不安を抱えた母に育てられた子が、
乳児期に安らぎ、満足感、安心感
といった感情を受け取ったとは考えられません。
さらに、父親の独裁家庭、
ムチによる折檻などが、
アドルフ・ヒトラーの凶行の原因となった、
というのが本書の考えです。
ユルゲン・バルチュ
ユルゲン・バルチュは、
未成年犯罪者でした。
生まれた時、
母親が子どもを置いて病院を出ていき、
お金持ちの肉屋の養子として拾われます。
良い家で育ち、
周囲からは感じの良い若者
とみられていたユルゲンが
凶悪犯罪者だったとは
信じられなかったようです。
しかし、
精神分析家であった
アリス・ミラーには
その原因が見えていたようです。
後の聞き込みによって、
赤ん坊の頃のユルゲンが
内出血の跡があるほど
殴られていたことが分かりました。
「私が早く帰らないと
家内が子どもを殴り殺してしまうんですよ」
と父親がいうほどだったのです。
また、
ユルゲンは教師から
セクハラを受けていたそうです。
そうした自身の子供時代の姿と、
被害者の少年を重ね合わせた結果、
子ども殺しの犯罪者として
19歳の時に逮捕されます。
現代にもつながる問題点
子ども時代に
親から心の傷を与えられた人は、
無意識のうちに
他人に幼少時の自分を見出し、
親からされたようなことをします。
自分の子どもに対して
つい手を上げてしまったり、
部下や後輩にパワハラ・セクハラをしたり。
もちろん、いい大人に
「心の傷が原因だから責任がない」
とはいえません。
パワハラやセクハラについては、
社会的にも厳しく罰せられます。
しかし、
家庭内の行き過ぎた
「教育・しつけ」
については、問題が外に表れにくく、
難しい問題です。
世代を超えて伝染する「心の傷の連鎖」
をどこかで止める方法はないのでしょうか。
魂を取り戻せ
アリス・ミラーのいう
「闇教育」
の影響を受けた人が、
自分の魂を取り戻すには
どうしたらよいのでしょうか。
まずは、
「心の傷」に気付くことです。
他人や自分に対して、
攻撃的になる時、
本当は誰に対して怒っているのでしょうか?
「良い家庭だった」
と思っている自分を少し疑ってみましょう。
抑圧された親への憎しみがあれば、
親への憎しみとして感じることが
魂を取り戻す第一歩です。
憎んで、悲しんで、
その先に本当の自分の姿があります。
おわりに
以上はあくまで、
ひとつの考えです。
統計的データもありません。
ただ言えることは、
子どもは親の持ち物ではなく、
一人の人格として大切にすること。
幸せな子どもが増えることを願います。
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